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日本橋は、どちらかと言えば「にぎやか」「楽しい」という言葉がしっくりくる場所ではないでしょうか。友達と連れ立ってサブカルチャーの店を巡り、ワイワイと飲み食いできるお店に入る。それも楽しみ方のひとつです。

ですが、ゆっくりと自分だけの邪魔されない時間を楽しむということを心が求める場合もあります。そんなときに行きたくなるお店があります。それが、「おひとりせき喫茶店 coro」です。名前からしてなんだかくすぐられるようなものがあると思いませんか?

今回はcoroのレポートです。

 

日本橋の端っこ。ひょっとすると見落としてしまうかもしれない場所に

coroは、とても目立たない場所にあります。「おひとりせき」と冠されているところからして、「目立たない」「干渉されない」というようなイメージをもたれる方は多いのではないでしょうか。お店の場所も、このイメージが踏襲されているような気がします。

堺筋沿い、日本橋3丁目交差点から松屋町筋に向かって歩きます。北に入れる3本目の路地が来たら左折。右手を見ながら数分ほど歩くと、雑居ビルの一階にこじんまりとした立て看板があります。シンプルに「おひとりせき喫茶店」と書かれており、その下には小さな勉強机のイラストがあります。よおく目をこらしながら歩いていないと通り過ぎてしまうので注意が必要です。

 

ひたすら丁寧な店主。ちょっと不思議なシステム

お店に入ると、「いらっしゃいませ」と少々ハイトーンボイスの店主が迎えてくれます。「わざわざご来店いただきありがとうございます。わかりづらい場所にも関わらずいらっしゃっていただいてありがとうございます」と、深々とお辞儀をされます。「あ、いえいえ」と思わず恐縮してしまいました。「はじめてでいらっしゃいますか?」と問われたので、「はい」と答えるとお店の少し変わったシステムを教えていただきました。

聞けば、coroは、セットメニューしか置いていないということです。デザートのセット、ランチのセットなど。そしてそれらは1000円以上といささか高いかなという設定です。

しかし、うれしい裏切りがあります。これらのセットは、3杯分のドリンクが付いているということ。つまり、のんびり長居をしながらドリンクをお代わりしてもらうことを想定しているのです。こうしたシステムを最初に説明するのは、お店のコンセプトを理解してゆっくりとひとりの時間を楽しんでほしいという思いからだそうです。「なるほど」と心の中でつぶやき、「わかりました。お願いします」と申し出て席につきました。

 

ひたすら静かな店内になぜか心躍ります

席に着こうと店内を見回します。といっても、6席ほどの小さな店内。そして「へえ」と思ったのは、すべての席が「ひとり席」ということでした。例えば、部屋の角には勉強机と椅子のセットのようなレイアウトになっていてデスクスタンドまであります。キッチンに面したカウンター席は3つ続きのレイアウトですが、視界を遮れるようにブロックが積まれているような工夫が施されています。

どこまで行っても一人の空間を確保できるような配慮がなされているのです。

店内にはすでに先客がお二人いましたが、見回したときに顔が合わないように席の配置がなされているところに徹底されたコンセプトを感じ、感動すらおぼえました。そしてお二方とも実に静か。店内に響く音はほぼ無音。よーく耳を凝らしてみると、ようやくヒーリング系のBGMが聞こえるという程度です。こうなってくると、自分が席を引く音だったり、鼻をすする音だったりが失礼にならないかと心配になるくらいです。

それだけ、このお店の静かさには説得力があり、この雰囲気を維持して自分も溶け込み、楽しみたいなという気持ちが湧いてきます。

 

やさしいスイーツ。丁寧なドリンク。

 

メニューは机の引き出しにあります。と言っても、選べるメニューは限られています。スイーツか食事か。それに3杯選べるドリンクだけ。もっとも、ドリンクはとても豊富なラインナップがあり、気分によって選べるのがうれしいところです。

この日は、季節のスイーツとドリンクのセット1000円をチョイスしました。まずはじめの一杯はジュースです。

ありがとうございます。ではご用意いたしますのでどうぞおくつろぎください。このビルはコンクリートでできているので、足元が大変冷えます。よろしければブランケットがございますので、お使いになられますか?」とにこやかに薦めてくれます。

「あ、大丈夫ですよ」と思わず笑顔になってしまいます。もう店主の心遣いだけで、十分あったかくなっている気がしてくるから不思議です。

しばらくすると、木製のプレートにスイーツとジュースが載せられてやってきました。

この日はイチゴのトライフル。そして100%のぶどうジュースでした。

スイーツやジュースは季節に応じて内容が変わるようです。いずれも口にすると、店主の丁寧さがそのまま反映したかのような「まっとうな」味。どうしてもうれしくなってしまいます。

 

ゆっくりとひとりを楽しむために、ぜひとも文庫などを持参したい。

その日は、ちょうど本屋で仕入れた気になる作家の小説を1冊カバンに忍ばせていました。

そこで、スイーツをゆっくりとたいらげた後に、じっくりと本を読むことに。

読んでいる間、店内はとても静かです。ページをめくる音すら聞こえるレベル。自然と本の世界にどっぷりと入り込むことができます。昨今、じっくりと本を読める静かなカフェというのが減ってきたところもあってとても貴重な空間だと感じました。

また、本読みにとっては誰とも顔を合わせないレイアウトになっているため、「感動して泣いても誰にも見られない」というメリットがあるのもうれしいところです。

店内には手塚治虫の漫画などがあり、それを手にとって読むこともできます。

ただ、このお店に来るのであれば「自分が最も一人で楽しめる何か」を持参して、ゆっくり時間を使うのが最高の楽しみ方ではないでしょうか。

例えば、スマホのゲームアプリでもいいですし、参考書とノートを持ってきて勉強してもいいでしょう。実際、このお店は勉強することもウェルカムなようですし、席にはコンセントも設置されています。そのため、パソコンなどを持ってきて仕事もできてしまうわけです。

もっとも、仕事をするにしても、できればタイピング音をあまり響かせないようにするなどの協力はしてあげたほうが、みなが幸せになれるのではないかと思えました。

 

気がつくとあっというまに2時間経過

文庫本を読み進め、2杯目にホットコーヒーをオーダー。これがまたやさしいコクのコーヒーで気に入り、3杯目も同じものを頼みました。

そうこうしている間に時計を見ると2時間が過ぎていました。思いのほか長居していることにびっくりし、お会計を申し出ることにしました。

ふと見上げると、壁には「祝1周年」と書かれた寄せ書きが。そこにはおそらくこのお店のお客さんであろう人からのお祝いコメントがたくさんありました。「ああ、愛されているんだな。わかるなあ」と納得してしまいました。

少しひとりの時間を贅沢に使いたいときに。やさしい店主が迎えてくれるcoroをおすすめします。

 

おひとりせき喫茶店 coro

住所:阪市中央区日本橋2-17-11 ラフィーヌ日本橋 1F

電話番号:非公表

営業時間:11時~14時55分 15時~21時

定休日:水曜日、木曜日