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日本橋界隈でのカフェと言えば、当然多くの人はメイドカフェなんかを想像するのではないでしょうか。あるいは、巷に溢れるチェーン店を想像する人も多いのではないでしょうか。

一方、日本橋界隈でバーと言えば、やはりメイドバーが思いつくのではないでしょうか。最近では、夕暮れ時のオタロードを歩くと、「おにーさん、一杯どうですかー?」とメイド服や制服に身を包んだ、若い女性に声を掛けられることもしばしばあります。もはや、難波や心斎橋、あるいは梅田と何にもかわらないのではないか、とある意味で残念な気分にもなったりします。

そんな日本橋界隈で、相当来る人を選ぶバー、いやカフェ?があります。それは、自転車好きが夜な夜な集まる「秘密基地」です。

下手をすると、誰も気づかない場所に看板が

秘密基地の名前は、「cycle&cafe TRI⊿NGLE」。難波駅を降りて、ごみごみしたなんばCITYを通り抜け、難波中2丁目交差点へ。日本橋3丁目交差点に向けて、人波をかき分けて進んでいくと、ドトールコーヒーが左手に見えてきます。ドトールが入ったビルが「音楽ビル」という古めかしいオフィスビル兼、マンションです。この1階。気を抜くとだれも目にしないような、小さな看板があります。そこには、「cycle&cafe TRI⊿NGLE」という文字がしっかりとあります。

よくよく見てみると、看板の隅っこには、円盤状の金属プレートが貼り付けられています。これは「コグ」というもの。スポーツバイクのパーツで、変速する際に活躍するものです。世間一般には「なあんだ」というものですが、自転車好きにはたまらない代物です。というのも、デュラエースという高級グレードが雨風にさらされる看板にペタッと貼り付けられているからです。すみません。多くの方には「デュラエースって何やねん!」ですよね。言い換えれば、ステーキで言うとA5等級のお肉。車でいえば、ベンツのSクラスといったところです。要は、そんな高級パーツを無造作に看板に使ってしまう自転車野郎のための店なのです。

しかし、ビルのふもとに看板はあるものの、この音楽ビル、なかなかに人を寄せ付けないオーラが出ています。出で立ちは、ザ・雑居ビル。下手をすると、やくざ映画で出てきそうなさびれた雰囲気があります。勇気をもって、エレベーターホールに進むと、郵便受けがずらりと並んでいます。見れば、トレーディングカードの店やボイストレーニングの店舗、メイドリフレなどが入居していて、日本橋らしいラインナップです。さらに勇気を振り絞り、ビルの3階に行きます。

降りると廊下は、やはり雑居ビル。いや、団地などの解放廊下に近い雰囲気か。お目当ての店舗は、エレベーターを出てすぐ左に。と言っても、昔ながらのマンションでよく見かける鉄の重たい扉に、オープン中である旨を示す看板がある程度。はっきり言ってあやしさ満点の店構えで、入るためにさらなる勇気が必要になります。

店構えとは真逆のフランクな「あんちゃん」が店主

若干震える手でギギイと扉を開けると、「あれー、誰か来たよ」と、おそらくお客さんと思われる声がしています。それに応じるように「ほんとだー。いらっしゃいませ」とラフな長髪の店主が礼儀ただしく、かつ、フランクに迎えてくれました。

店内は、3席のカウンターと4人掛けのソファ席だけ。まるでマンションの一室を改装して作られたような雰囲気です。ひときわ目を引くのは、店、いや部屋の奥にデンと置かれたロードバイク。そして、壁に掛けられたサイクルジャージやサイクルキャップたちです。

「どなたかに聞かれてこちらのお店に?」「いいえ」「ひょっとして看板を見て」「はい」「じゃあ、自転車好きですね」と矢継ぎ早に、でも気持ちよく会話が進みます。

「おお、何に乗っているんですか?」と隣のお客さんがグッドタイミングで会話に参加します。「アルミに(アルミ製のロードバイクの意味)」と答えると、「いいですねー。店主もそうですよ」と会話のボールが店主にパスされました。「アルミいいですよねー」・・・(以下、略)。まだ注文前だと言うのに、自転車の話が尽きません。

実際のところ、自転車好きの人間は乗っている最中は何人で走っていても、基本的に走ることに集中するため、ある意味で孤独です。そのあとに仲間同士で語り合える場所に飢えています。そのため、ライド(自転車乗り達は、ある程度の距離を走る遠出のことをライドと言います)が終わった後に、コンビニの前でスポーツドリンクを飲みながらダラダラしゃべったりします。もっとも、それだけでは飽き足らず、いつでも趣味を分かち合いたいと思っている人が多い種族なのです。

さすがに話に夢中になってしまって申し訳ないので、オーダーをします。と言っても、会話をじっくり楽しみたいので手頃なジントニックを。

ところが、「とりあえず飲めればいいか」と考えていたジントニックが秀才でした。

ジンのチョイス。トニックウォーターとの配分、そして、冷たさ。すべてが完全なバランスです(自転車好き的に言えば、上質なクロモリロードバイクのフレーム構造のような完全性があります)。聞けばこのお店、ジンにはこだわりがあるらしく、なんと数十種類のジンを取りそろえているとのこと。反対に「うちは全然ウイスキーを置いていないんですよ」と正直に言うほど、ウイスキーはありません。

さらに驚くことに、店構えはバーのように見えますが「うちはカフェです」と店主は言い張ります。でも、どこか自信なさげで、お客さんにも「バーやん!」と突っ込まれているのがほほ笑ましい。いずれにせよ、一元さんでも「自転車好き」という人ならば、とてもウェルカムな雰囲気があるお店です。

 

自転車好きにはうれしい。変てこなサービスも

このお店、自転車好きにとってはうれしいポイントがいくつかあります。

まず、サイクルキャップが買えるという点。実は、自転車乗りはヘルメットの下にサイクルキャップをかぶる人が多い。

ただ、サイクルキャップの大半は海外製で、かつ、ワンサイズのため、ぴったりフィットするものが少ないことが悩みの種です。しかし、ここでは、サイズを複数用意していて、しかも生地にもこだわったものがあります。例えば、ドイツ軍が着用する軍服と同じ生地で作られた迷彩柄のものなどです。

そして、もう一つは、バルコニーにシャワー室が置かれていて、使用できるということ。「実際に使った人は2人しかいないけど」と笑いながら店主は言いますが、タオルセットのレンタルを500円で行っているため、きちんと使えます。店主自身、「お店が暇なときは三本ローラー(室内で自転車を漕ぐためのトレーニング機材)でトレーニングしてシャワー浴びます」と言うから、使えるのだろう。ただ、「ベランダにシャワー室があるから、冬場の湯上りは寒いけど」という。一度、夏に自転車でやってきてシャワーを使ってみようかと思った。もっとも、それはそれで勇気が必要ですが。。。

ともあれ、色々突っ込みどころは満載だけれども、自転車好きなら楽しいことは確実なので、ぜひ一度トライしてみてほしいです。六甲山をヒルクライムできる度胸があれば、音楽ビルの雰囲気に負けずに3階まで登るのは、わけないはずです。

 

店舗情報

サイクル&カフェ トライアングル

住所:大阪市中央区難波千日前6-5 音楽ビル301

電話:090-1168-6890

ツイッターアカウント:http://twitter.com/zeissi4416

営業時間:20時~24時くらい

定休日:月曜日