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もはや、日本の国民食とも言えるカレー。

インド系のカレーもあれば、給食で出てくるようなカレーもあります。もはや、「元祖」だったり、「王道」だったりという言葉をどんなカレーに対して言えばいいのかがわからない状況です。それほどまでに、カレーがインドから日本にやってきて、日本の中で独自の進化を遂げたメニューと言えるのではないでしょうか。

そうであれば、真正面から多様性を受け入れ「カレーは自分に合ったものを食べればいいのだ」と結論付けてしまうほうが、よっぽど精神衛生上よろしいのではないかなと思います。

悩みだすと、ルーはとろみがあったほうがいいのか、シャバシャバなほうがいいのか、具はビーフがいいのか、チキンがいいのか。はたまたナンで食べたほうがいいのか、ごはんがいいのかなどなど、「カレー沼」にはまってしまいます。

「今日はこんなカレーを食べたい」「俺が好きなカレーはこんなタイプ」こうした選び方のほうが、なんだか楽しめる気がします。

そうやってカレーの多様性を受け入れると、日本橋界隈は大阪でも特筆すべきカレー屋密集エリアであることに気がつきます。

そこで、折に触れてさまざまなカレー屋をレポートしていければと考えています。

今回の対戦相手は「マドラス」です。いわゆる「昔ながらのカレー」が好きな人にはハマるのではないかと思います。大阪の有名どころで言えば、インディアンカレーなどが好きな人は好む味の傾向ではないでしょうか。もっとも、私の中では、お店の雰囲気もあいまって、「三丁目の夕日カレー」と勝手に名前をつけています。そうした、どこかしらに懐かしさの漂うお店なのです。

お店の場所は、堺筋沿いのauショップから、松屋町筋方面に1ブロック入ります。その通り沿いに店があります。なぜこうもあっさりした案内なのかと言えば、「まず見落とすことのない目印」があるためです。

というのも、お店の前には畳一畳分はあろうかと思われる布製の看板がドーンと待ち構えているからです。そこには、薄汚れた黄色地に赤い文字で「カレー」とだけ、デーンと書かれています。歩いていると、20~30メートル離れていても、「おお、あそこか」と通天閣をバックにその文字を眺めることになるでしょう。

胃袋も舌もカレーを欲した状態で、お店の中に入ると、「いらっしゃいませー」とやや派手な柄のシャツを着た店主がカウンター越しに迎えてくれます。続いて、「どないしましょー」と、これまた笑顔で問いかけてくれます。

「何にしましょう」ではなく、「どないしましょう」です。それもそのはず、このお店にはメニューがカレーしかありません。選択の余地なしなのです。もちろん、カレーのサイズやトッピングは選べます。しかし、チキンカレーやマトンカレーといった複数のメニューはなく、「カレー」しかないのです。したがって、「何」という選択ではなく、「どう」アレンジするかという意味で、「どないしましょう」となります。なるほど。文法的に一切の間違いはありません。

まだ上着も脱いでいなければ、座る席すら選んでいないのに、「どないしましょう」と言われても、、、と思ったりもしますが、こういったシステマチックなオーダーこそが、「カレー屋に来たんやなあ」と思わせるポイントでもあり、なんだかうれしくなってしまいます。

 

「中に目玉で」と上着を脱ぎながらオーダーを言うと、「あいよ」と短い返答が来ます。

このお店のメニューは「小(600円)」「中(700円)」「大(800円)」「ルー大盛り(1000円)」というラインナップ。そこに、生卵であったり、カツであったりのトッピングを追加していきます。私は、白身も味わいつつ、火の通った半熟の黄身をジュブジュブとつぶしてルーに混ぜて食べるのをなによりの楽しみとしているため、「目玉焼き(100円)」をトッピングに選びます。お決まりのコースです。

ちょっとした注意点としては、このお店の盛りがサービス精神旺盛であるということ。中は、他店の大盛りよりもボリューム感があります。大を頼むのは、腹をすかせた部活学生か、大食いチャンピオン、あるいは、玉砕覚悟の特攻カレー隊員でしょうか。どうかご注意を。そんな大でも、800円というリーズナブルさ。愛される理由は価格にもあるのではないでしょうか。

 

さほど待たずしてカレーがやってきます。

楕円形の大きな平皿に延ばされたごはん。そしてよい具合に黄身だけ半熟の目玉焼き。その上から、まんべんなく、かつ、ドバーっとかけられた色の浅目のルー。どっからどうみても、「正しいカレー」です。品があるとか、本格的という言葉とは対極にある見た目。「腹が減った。そして胃袋はカレーしかうけつけんと言うとる」だからカレーを食いたい、というときのファーストチョイスなのです。

といっても、まだスプーンをつけません。まずは、カウンターに備え付けられたタッパーの中に入った大粒のらっきょうをドサドサとカレーに投入。続いて、真っ赤な福神漬けをこれまたドサドサとカレーに投入します。そして、おもむろにスプーンを持ち上げ、ルーとごはんを程よい塩梅で配合し、口へと運びます。

 

ルーは結構なとろみがあり、おそらくは小麦粉をしっかりとバターで炒めたような下処理がなされているのでしょう。きちんとコクがあり、甘さをおびたよい香りがします。口に含むと最初は、甘みがありますが、ジワリジワリとスパイスの辛みが攻めてきます。パッと見は給食カレーをほうふつとさせますが、なかなかどうして、ちゃんとスパイスが効いたカレーに仕上がっています。

辛み、コク。少しの甘みとよい香り。お店の自信にあふれたバランス感がそこにはあるのです。安心して口と皿との間でスプーンを往復させます。途中、辛みが徐々に勢力を拡大し、額に汗がにじみます。辛いのが苦手、という人はおそらく水を何回か口にする。あるいは、らっきょうや福神漬けをおかわりするといった「微調整」が必要なのではないでしょうか。

淡々と一定のリズムで食べていくと、あっという間に完食です。食べ終わるころには、汗が額から頬をつたい、首筋へと流れているのに気づきます。

スプーンを皿に置き、誰に向かって言うともなく「満足」とつぶやいていました。そう、おいしいやうまいではなく、このお店には「満足」という言葉こそふさわしいと感じた次第です。

あとは、サクッと会計をすませ、店を後にしました。通りに出た時の冬の寒さが、スパイスで上がった体温に心地よい限り。どこかで、ゆるりとコーヒーを飲めば、さらに至福の時間となることは容易に想像できます。

ちなみに、蛇足かもしれませんが、店員さんが着用している「マドラス」と入ったTシャツはお店で買えます。MとLの展開で2500円。おひとついかがでしょうか?

店名:マドラス

住所:大阪市浪速区日本橋4-3-12

電話:06-6644-9020

営業日:無休

営業時間:11時~22時(月曜、木曜のみ19時まで)