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ここ数年、日本橋界隈はがらりと雰囲気が変わりました。アニメ関連のお店ができ、それに伴ってトレーディングカードを扱うお店、コスプレを扱うお店などなど。いわゆるサブカルチャーに関連したお店が集まり、賑わいを見せるようになっています。

しかし、それ以前の日本橋はと言えば「問屋街」でした。家具、電気工具、調理器具。こうしたものを扱う商人の街だったのです。そうした商人の街には、当然飲食店も集うものです。安く、おいしい定食屋さん。あるいはサッと食べられるカレー屋さん。

そして、商人たちが息抜きに立ち寄る喫茶店。こうした店舗は、時代の流れとともに影を潜めるようになってしまっています。それはどこか悲しい感じがしたりもします。

しかし、そんな流れとは裏腹に古くから愛され続けるお店もあるわけです。

今回取り上げるのは、そんな古き良き日本橋の印象を保ち続けるお店軽食&喫茶 竹です。

 

行列ができる「タケル」の向かい。懐かしい佇まいのお店

 

お店の位置はわかりやすい場所です。もっとも、お店に入るには「ある種の勇気」が必要ではあります。

堺筋の日本橋3丁目交差点から南に1ブロック進みます。そして右折。オタロード方面に向かいます。すると、左手に肉料理で人気のあるタケル系列の牛カツ屋さんが目に入ります。おそらく行列ができているからわかるはずです。軽食喫茶 竹はその真向かいにあります。

界隈の賑わい。ポップな雰囲気とは真逆の印象のお店。例えば、「三丁目の夕日」なんかに出てきそうな「喫茶店」です。タイル張りの古びたビル。赤いビニール製の軒先テント。ガラスのショーケースには、食品サンプルが並び、手書きのメニュー表が添えられています。完全にここだけが「昭和」です。店先の看板には、カレーライスの文字が躍ります。

モノクロで写真を撮ったら、確実に懐かしい雰囲気がでてしまうような外観です。それゆえに、「このお店よそ者を寄せ付けない雰囲気があるぞ。。。」と身構えてしまう人もいるのではないでしょうか?

実際、私も入るのを一瞬躊躇しました。しかし、興味が勝って敷居をまたいでしまったという感じです。

 

実は40席あるオオバコ。正しい喫茶店の姿。

 

お店に入ると、どこからどう見ても昭和な店内です。パイプいすが並び、白い塩ビ板の机が置かれた店内。そんなケミカルな家具と雰囲気が異なる、木を多用した店内の造形。

このアンバランスなコントラストが昭和な喫茶店です。

例えるならば、日活のやくざ映画でチラッと映る喫茶店といった雰囲気でしょうか。なんともいえない非日常感、日本橋のポップな印象とはまったく異なる空気に、妙にテンションが上がります。

入り口こそこじんまりとしていますが、2階席がありなんと40席もあるオオバコです。きっと昔は、昼時になると商人たちがこぞってカレーを食べにきていたのかなあと想像してしまいます。

 

おばあさんがにこやかに応対してくれます。

「いらっしゃいませ」と、おばあさんがお冷を運んでくれます。思わず、「いやあ、いいお店ですね。長くやってらっしゃるんですか?」と問いかけます。すると、「ええ、ずうっとやってますよ。多分、あなたが生まれる前から」とのお答え。「ええ!?そんなにですか。いつからでしょうか?」と答えると、「44年からです」という。「44年・・・。西暦?」とかますと、「ちゃいますやん。昭和ですよ」と笑顔で応じてくれました。

昭和44年開業。となれば、実に創業50年近くです。ほぼ半世紀。この日本橋で変わらずにお店を営んでいるわけです。聞けばおばあさんがお店をオープンさせ、いまは息子さんが中心になって営業されているとのこと。その息子さんは、お店の奥でパタパタとドリンクを作っています。息子さんといっても、初老の方です。「いや、こりゃあ頭がさがるな」と頭の中でつぶやきます。

 

カレーライス1択といっていいメニュー構成

お冷をチビチビと飲みながら、メニューに目をやります。といっても、壁に貼られた手書きのメニュー表です。そこには、「カレーライス」「エビフライカレー」「コロッケカレー」「カツカレー」などの文字が並んでいます。そうです。このお店は、喫茶店といいつつほぼカレー屋さんなのです。しかも激安。カレーライスで500円。カツカレーでも700円です。

「めちゃめちゃ安い!」というポップがありましたが、おっしゃる通りです。

そのほかにトースト類もありましたが、時間は昼時です。というわけで、ほぼカレー1択のメニュー構成のため、カツカレーとミックスジュースを注文します。

こういう喫茶店(ここはカレー屋さんかもしれませんが)では、なぜかミックスジュースを注文したくなるのは私だけではないはずです。

 

嫌いな人がいないだろう、正しいカレーライス

 

しばらくすると、まずミックスジュースが到着しました。ミックスジュースといえば、どちらかというと薄い黄色というイメージがあるのではないでしょうか。しかし、竹のミックスジュースは薄いピンク色です。いったいどんな味なのか。。。と思いつつ口にすると、これがまあおいしい。みかん、バナナ、そしておそらくは少しイチゴが入っていると思います。酸味のバランスが良く、歩きつかれたときには体が欲するだろう一杯です。

うれしくなりながらチューチューやっているとカツカレーが到着します。

まずうれしいのがお皿が楕円状の白い深皿であるということ。そして、クリーミーな濃い茶色のルーであること。さらにうれしいのは、カツが薄カツであるということです。

どこからどう見ても昭和のカツカレーです。こういうクリーミーなルーには、薄いカツのほうが合うと考えているため、見た目だけで「こりゃ間違いないわ」という結論にいたります。

おもむろにカレーを一口食べると、口の中に昭和が広がります。「欧風カレー」でもなく「スパイスカレー」でもなく「インドカレー」でもなく、間違いなく「カレーライス」です。

 

アラフォーおやじが若かりしころ、どこかの喫茶店、あるいは学食で食べたであろうカレーライスなのです。もはや存在自体に神々しささえ感じます。

一口、また一口と食べるうちに、昔のことを思い出してしまう不思議な感覚に陥ります。

おそらく、嫌いと答える人はいないだろうと思う味です。

普段よりもゆっくりと食べ終わり、これまたゆっくりとお冷を飲み、最後にミックスジュースで口直し。幸せって言うのはこういうことを言うのかもしれないと、感じます。

 

実はとっても常連さんの多いお店。再訪を誓う。

ふと店内に目をやると、実は年齢層の幅が広く、若い男性もいればおっちゃんたちもいます。そして、おばあさんが「いつものやつでいい?」と聞いているではありませんか。なるほど、これだけ長く続くお店。さすがに常連さんたちがいるようです。

そんな私も、一発でここの雰囲気。懐かしさ満載のカレーの虜になりました。

(3日後に再訪してしまったのはここだけの話にしておいてください)

 

軽食&喫茶 竹

住所:大阪市浪速区日本橋3丁目7-20

電話:06-6631-8643

営業時間:11時から17時

定休日:水曜日