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純米吟醸酒、熟成の芋焼酎、古くを辿ればモルトウイスキーなど。こと、お酒にはブームがあり、そのたびに「人気銘柄」が登場します。例えば、日本酒で言えば最近有名なものなら「獺祭」など。芋焼酎なら、「魔王」「森伊蔵」「百年の孤独」あたりでしょうか。

もっとも、人気銘柄ばかりが銘酒ではありません。きちんと杜氏さんが仕込んだおいしいお酒は実はたくさんあります。多くの場合、それに出会えていないのは、探す側に問題があったりするものです。興味が高まったら、ちょっと調べて良きパートナーとなってくれる酒屋さんに訪れる。そして味わい、また別のお酒を試す。このルーティーンで、さまざまな楽しいお酒との出会いが得られると思われます。

そこで重要になってくるのが、パートナーとなるお酒の仕入先。つまりは酒屋さんの存在です。アニメと家電の聖地である日本橋にも、良きパートナーになれる酒屋さんが存在します。

オタロードのど真ん中。そんな場所に昔ながらの酒屋さん

 

その酒屋さんの名前は、「きくや酒販」さんです。場所はオタロードのど真ん中。休日ともなれば、アニメグッズやトレーディングカードを買いにやってくる人たち、あるいはメイド喫茶の店員さんでごった返す場所にあります。

オタロードを南下していき、この界隈ではまず間違いなく誰でも知っている「メロンブックス」さんを右手に見つつ、もう少し進みます。

すると、同じ右手にこじんまりとした酒屋さんが現れます。パッと見は、どこにでもある、普通の酒屋さんです。ガラス越しに色々なお酒が並んでいるのがわかります。ただ、よく見ると店先には、さまざまな銘酒の空き瓶がディスプレイされており、お酒好きならば「ここは結構やるお店やな」というのがわかります。

 

店内には所狭しとこだわりの銘酒たちが

お店の中に足をすすめると、これまたどこにでもあるような酒屋さんの風情です。店の奥に向かって3列の棚が並び、そこには日本酒や焼酎、あるいはワインなどが整然と並んでいます。

お店の奥には、コンビニエンスストアなどでよく見かけるガラスのショーケース型冷蔵庫があり、そこにもお酒が並んでいます。

あまりお酒を知らない人からすれば、「うん。普通の酒屋さんやね」となりますが、よく目を凝らしてみてください。なんとショーケース型の冷蔵庫にはほとんど缶ビールが並んでいません。あるのは吟醸酒をはじめとする日本酒ばかりです。また、日本酒にはそれぞれ、日本酒度や酸度などの「スペック」がまとめられたポップが飾られていて、そのお酒の特性をつかむ材料がわかりやすくなっています。

並んでいるお酒の比率は、日本酒:4、焼酎:3、泡盛:1、ワイン:1、その他:1という程度の構成です。その他の部分には、ビールなど、他の種類のお酒やぐいのみなど、「お酒を楽しむための道具」も含まれています。店内に並ぶお酒の構成比率からも、「うちは日本酒と焼酎がメインやで〜」というのが伝わってくるのが楽しいところです。それが、日本橋のど真ん中にあるからなんだかアンバランス感にほほえましさがあります。

 

これだけあると、迷うのは当然。ではどうするか?

しかし、これだけたくさんのお酒が並んでいると、ぶつかる課題があります。それは「どうやってお酒をチョイスするか」ということです。

いわゆるプレミアムがつくような(例えば獺祭や森伊蔵など)銘柄は目につきません。むしろ、お店が独自に開拓した銘柄が並んでいるといった風情です。お客さん側が相当な知識や経験がないかぎり、迷ってしまうのではないかと思われます。

そんなときに、おすすめの方法が、このお店では2つあります。

まずひとつめは、ミニボトルを購入するという方法です。このお店、日本酒に関しては、同一の銘柄(お店がおいしいと考えているもの)について、一升瓶だけではなく、5号瓶や、ミニボトルまで取り扱っています。実際、ショーケース型冷蔵庫の最上段にはミニボトルがいくつも並んでいます。

そこで、迷ったらこのミニボトルをいくつか購入し、自宅で飲み比べてみて好みのお酒が見つかったら、改めて大瓶を購入するというのが賢い方法と言えるのではないでしょうか。

 

迷ったら聞いてしまうというのが賢い

もっとも、この方法は日本酒のみに通用すると考えてほしいと思います。焼酎についてはミニボトルの取扱いがありません。そのため、「エイヤ」と大瓶を購入しなければならないのです。

せっかく訪問するなら間違いのない、好みにピッタリのお酒を選びたいもの。そんなときは潔く店員さんに話を聞くのがおすすめと言えます。実際、私自身もそのようにしてよい焼酎にめぐり逢いました。

とある訪問時に、「焼酎を探しているんですが、あいにくお酒が弱いので、さくさく飲めるのがいいんですが。芋の香りがよくて、のみやすいものはないですか?」と聞いたところ、「それだったら、アルコール度数を基準に考えたらええと思いますよ。やわらかい味が好きやったら、甕(かめ)で仕込んだものがええと思います」とすぐさま解答が得られた。そして示されたのが、「甕雫(かめしずく)」だった。京屋酒造製の芋焼酎。販売時点から甕に入れられており、付属の柄杓でグラスにうつしかえて楽しむというものだ。アルコール度数は20度。一般的な芋焼酎が25度前後のアルコール度数だと考えると、お酒の弱い人にも敷居が低いものと言えます。なかには40度の度数があるというのが焼酎の世界ですから。

すすめられるままに会計をしていると、「ちょっと待ってくださいね」と言って、バックヤードに消えた店員さん。少しすると1枚の紙を持って再登場してくれた。そこに記されていたのは、甕雫をはじめとする甕仕込み焼酎の特徴一覧だった。「今日買ってもらったものは、一般的な甕雫です。これのほかに、米麹をつかったものをブレンドした甕雫「玄」ってものもありますわ。そのほかに、同じ甕焼酎だったら「川越」っていうのもまろやかでおいしいですよ。ただ、どれも度数は高くなるから、だれかお酒の強い人と飲んでくださいね」と、ちょっとした焼酎講義を受けられた。内容にはなるほどとうなずくばかりで、一つのお酒を選ぶことで、派生的に次に選ぶべきお酒がわかるというのには驚きました。「まるでソムリエやな」と感心して店を後にした次第です。

ちなみに、帰宅後に飲んでみると、自分の好みにドンピシャのお酒で、以後、自宅に常備するお酒となっています。ただ一つ、問題があるとすれば、空の甕がどんどんと部屋の中を占拠していくということぐらいですが、おいしいからいいかと大らかに考えてしまっています。

日本橋のお酒探索。是非一度試してほしいものです。

 

きくや酒販

住所:大阪市浪速区日本橋西1−1−5

営業時間:平日10時30分〜19時30分、日祝日12時〜19時30分

定休日:年始のみお休み