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今回は開店から11年目を迎えた『大正浪漫酒房 月読』に行ってまいりました。

ちなみに読み方は「つくよみ」ですのでお間違えなきよう。

いや間違えたからってどうということはないんですよ?

 

このお店が開店して間もなくの頃、小生は大学生でした。

小生のオタロード歴の始まりのお店と言っも過言ではありません。

個人的にも思い入れがあるお店なのに、意外とこのお店のことを知らなかったんだなあ。

 

鬼嫁と子供を連れて月読へ

ある夏の暑い日、小生と嫁は1歳の息子を載せたベビーカーを押して難波を歩いていました。NGK(なんばグランド花月)からの帰り道でした。

 

小生「ちょっと飲んでいかないでござるか?」

鬼嫁「いいお店あるの?」

小生「取材してみたいお店がござって」

鬼嫁「取材? 取材って何よ」

小生「かくかくしかじかでござる」

鬼嫁「ハァ? メイドカフェのライターを始めた?」

小生「さようでござる」

鬼嫁「そういうの気持ち悪いからやめてよ。あなたねえ、子供もいるのに妙な仕事ばっかり受けてこないで」

小生「面目ないでござる」

鬼嫁「アタシは絶対にメイド喫茶とか行かないからね。一応、見るだけ見るけど、雰囲気が気持ち悪かったら帰るからね」

小生「かたじけない。非常に分かりやすいフリでござる。あとはデレ要素を待つだけでござるな」

鬼嫁「アタシに分からない話はしないように」

小生「承知したでござる」

息子「ZZZ

非オタにツンデレとか分からないですね、分かります。

 

  ひさかたの月読で飲む麦酒や

 

というわけでやってきました。

これが月読です!

 

 

 

見たことはあるけど入ったことはないという方が多いと思います。

場所は有名店『e-maid』のほぼ向かいにあります。

 

「ベビーカーあるけど入っていいですか」と尋ねるとテーブルの椅子を1つ抜いてくれました。

お客さんは半分くらい入っていますが、騒がしい集団はいません。

2~3人で好きなアニメの話をしているお客さんや、さっき買ってきたのであろうマンガの新刊を1人で読みふけっているお客さんなど。

落ち着いた様子でそれぞれ楽しんでいます。

 

鬼嫁「悪くないじゃん。こういう静かなお店好きだよ」

 

嫁はまんざらでもない様子。

 

客1「原作をしっかりと踏まえたアニメだったよ。原作の行間を丁寧に解釈できてる。作画にも『スゴ味』があったね」

客2・客3「exactlly(その通りでございます)」

 

周囲のお客さんの会話はこんな感じ。

小生には何のアニメの話をしているのかが分かってしまいますが、多分嫁には分からないんだろうな。

  

鬼嫁「個室もあるんだね」

小生「大学のときにここの個室で飲み会やったことあるんだ。好評だったよ」

鬼嫁「何年前の話?」

小生「えっと、2006年に卒業したから……11年前?」

鬼嫁「そんな昔からあるんだ」

小生「日本橋でもかなり古い方じゃないかな」

鬼嫁「10年続いたらもう文化だよ」

息子「ZZZ

小生「この子はまだ1年でござるな」

鬼嫁「まずは生中かな」

 

そういいながら嫁はメニューをパラパラとめくります。

途中、カウンターの方を示しながら言います。

 

鬼嫁「わたしだったらメニューも和紙で作るなー。ここまで雰囲気凝ってるんだったら」

  

鬼嫁「電気ブランって、どこ発祥か知ってる?」

小生「それ、どういう質問でござるか?」

鬼嫁「知ってるかなと思って」

小生「妖怪漫画ばっかり描いてた頃の押切蓮介の東京が舞台の漫画で、『ぼくと姉とオバケたち』っていうのがあって、一人立ちしたカッパが電気ブラン飲んでたから東京でござる」

鬼嫁「知らんよ」

息子「ZZZ

鬼嫁「まあ、東京ってとこまでは正解かな。正解は浅草」

小生「ああー、そうでござった。二人で行ったでござる。このへんにも電気ブラン飲めるお店、何件かあるのでござる。今度別の店もいかがか?」

鬼嫁「メイド喫茶で?」

小生「さようでござる」

鬼嫁「まあ、雰囲気良い店だったらまた今度行ってもいいかな」

小生「デレ要素いただいたでござる」

鬼嫁「麦全麹。ロックで」

 

嫁の酒が進んでいる……!

 

 

いつの間にか、お客さんの入りは満員。女将さんが忙しそうに注文を取ってくれています。

小生らもお刺身を注文します。完全に酒を楽しむ宴会となりました。

 

 

厚切りである……!

 

鬼嫁「いいじゃん。そのへんで買ってきた刺身じゃなくて、ちゃんとキッチンでさばいてるってことだね」

小生「ポテトフライも頼むでござる」

 

細めのカリッとしたポテトフライが皿いっぱいに盛り付けられてきました。

 

鬼嫁「やっぱさ、ポテトフライは太いのか、こういう細いのかだよね。中途半端だとダメ」

息子「ZZZ……ふええ」

 

ゆっくりと、息子が起きました。

テーブルの上のポテトフライを見つけて、目を輝かせます。

 

息子「ままままま!(訳:ママ!)」

鬼嫁「なぁに?」

息子「まんま!(訳:ごはん!)」

 

息子はポテトフライをちょっとだけ食べました。

 

結局、嫁は琥珀エビス2杯と麦焼酎2杯。私はノンアルコールビール2本。

お会計は7,000円ほどでした。

 

落ち着いた雰囲気と温もりある大将の手料理。

メイド喫茶ではありません。和風のメイド(女中)さんはいますが、メイドさんがいることをウリにしたお店ではありません。

メニューの厳選と研究を怠らなかった結果が、11年というお店の歴史を紡いできたのです。

小生のオタロード歴よりも長い歴史を持ったお店は、もう『月読』のほかは数件しかありません。いずれも、明確なコンセプトと落ち着ける空間を伴った名店です。

 

オタロードで歴史を刻んできたお店には、それぞれ重みがあるのです。

 

 ありますよ、家族で飲みに行ける店

 

その後、今回も月読の大将にインタビューを敢行しました。突然の得体のしれないライターを温かく迎えてくれる大将の器の大きさに感謝です。

 

小生「どうも、武雄でござる」

大将「お待ちしてました。どうぞ」

 

大将に案内され、カウンター席に腰掛けます。

 

小生「実は1か月ほど前に来たのでござる。ベビーカーで子供連れて、家族で」

大将「ああ、あの時の」

小生「覚えていてくれてかたじけないでござる。妻も落ち着いた店だと喜んでいたでござる」

大将「常連さんも言ってくれます。落ち着くって。商売的には、落ち着けるお店だと儲からないんですけどね」

小生「良いお店の条件でござるよ。なんだかんだで長く続くお店に多いことでござる」

大将「去年、娘も生まれたんで、なんとか続けないと。生活かかってますからね」

小生「小生の息子も1歳でござる。まだ手も掛かるし大変な時期でござる」

 

まずは前の訪問時から気になっていた電気ブランを注文します。

小生「クセのある風味でござる」

大将「好きな人はとことん好きみたいですね。ブランデーとか焼酎とか、いろいろ混ぜてあるみたいです。結構強いですよ」

小生「アルコール度数……40だと!?」

ストレートでは無理と判断し、ソーダ割で飲みました。おいしかったです。

 

さて、33歳でこのお店を始めた大将は、現在44歳。

女将さんと結婚してから始めたお店なんだとか。

 

小生「昔はランチ営業があったと記憶しているでござる。女将さんにもお会いしたはずでござる」

大将「土日だけランチもやってたんですけど、数年前にやめちゃいました。ケガなんかもありまして」

小生「そうでござったか」

大将「このお店を始めてから2年くらいは忙しすぎてアニメも見れないくらいだったんですけど、『コードギアス』あたりからやっと見れるようになりました」

 

開店当時はメイドカフェブームに沸いていた頃で、オタロードにも今より多くのメイドカフェがあり、街中にメイドさんがあふれていたものです。

 

小生「昔は『月読』ももっとメイド喫茶に寄せていたと思うのでござるが」

大将「今はこの時間は私一人ですね。昔は女中さんもたくさん入れてたんですけど、平日はお客さんも少ないので」

 

時刻は木曜の夕方5時。さすがに客は小生ひとりでした。

 

大将「メイド喫茶と掛け持ちしている女の子も何人かいたので、色んな所から情報が入ってきて業界に詳しくなりました」

小生「今は『それでも街は回っている』のシーサイドみたいな距離感でござるか?」

大将「そのくらいかもしれません。『それ街』いいですよね。大好きです。最終回までよくできてて。タケル君とエビちゃんの恋だけは最後まで描いてほしかったなあ」

小生「話を相当に作りこんだ上ですべては語らないでござるな、石黒先生」

大将「日本橋に石黒先生が看板を描いたマッサージ屋さん(※正確には整骨院でした。興味のある方は調べてみましょう!(←丸投げ))があるんですよ。多分、看板の絵は歩鳥だと思うんですけど」

 

大将は石黒先生がお気に入りのようで、好きな作品は『外天楼』となかなかのマニアックさ。

メイドカフェ色の薄れた店構えに似つかわしくない濃さのオタ知識が飛び交います。

 

小生「そこの『島風』は狙ってるのでござるか?」

大将「はい。『島風』と『霧島』で」

小生「やはり『ぜかまし』でござったか」

大将「一時期、RPG風のお酒を集めてみたこともあるんですよ。『勇者』とか『魔王』とか」

小生「『魔王』は分かるでござる」

大将「『龍』とか『剣』が名前に入ってたり」

小生「ありそうでござる。しかし名前が出てこない……」

大将「変わったお酒だと、こんなのもありますよ」

大将が冷蔵庫から取り出した焼酎には「パンダの奇妙なほにゃらら」という意味不明な言葉とともに両手両足を奇妙に捻ったパンダのイラストが描かれていた。

小生「見事なジョ○ョ立ちでござるな」

大将「たぶん許可も取ってないですね」

名前は『パンダの旅』。どんなお酒なのかはこちらも興味のある方に丸投げいたします。

 

 

小生「昔、学生の頃にこの部屋で飲み会を開催したでござる。たしか、『月は東に日は西に』があったはずでござるが……」

小生はメニューに目を通すが思い出の焼酎は見つからない。

大将「『はにはに』ですね。それかなり初期の頃ですよ。もう製造されてないんです」

 

そんなこんなで話が弾んでしまい、わりと長居してしまった小生。

お会計は2,970円でした。電気ブランと焼酎3杯でもう泥酔状態です。

 

11年の歴史を刻んできた店内は、随所に盛り込まれたオタ要素を飲み込むほどの風格がにじんでいます。

和風居酒屋『月読』。オタロードには、家族で飲みに行ける店もあるんです。